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2021.1.28

今が旬の“コート系”スニーカー
「名品を履く喜び」を感じるアディダスの2モデル

<店長>
社内1の洋服マニア。いつもおしゃれな靴を履いている。

<佐藤さん>
メンズ雑誌「smart」をはじめ、これまで多数の編集・著作物を手掛けている佐藤さん。

Q.スーパースターはなぜ、80sな雰囲気なのか?

今回はアディダスのスニーカーについてお話したいんです。

スーパースターとスタンスミスですね。どちらも今が旬です。

はい。とても人気があって、うちの店でもよく売れていますよ。

ダッドスニーカーの一大ブームが落ち着いてきた昨年あたりから、シンプルなコート系スニーカーのトレンドがきてますからね。

テニスやバスケットボールなど、コートを使っておこなうスポーツ用のスニーカーが“コート系”ですね。機能満載の最新形ではなく、シンプルなローテクもののロングセラーモデルが人気のようです。

ハイテク感バリバリなダッドスニーカーの次のトレンドですから、揺り戻しなのでしょう。コート系スニーカーには名作が多いですけど、スーパースターはその筆頭です。

半世紀以上にわたって愛される、アディダスの大定番バスケットボールシューズですよね。発売は1969年なのに、まったく古さを感じさせないデザインです。

スーパースターは発売当初から、画期的なデザインとして注目されたそうですよ。ちなみに、世界で初めて「スニーカー」と表現されたのは、バスケットボールシューズだったってご存知ですか?

そうなんですか。

「スニーカー」は“足音を忍ばせて歩く人”という意味を持つ言葉ですが、1916年にアメリカのケッズが、新発売のバスケットボールシューズにつけたキャッチフレーズから広まったそうです。

なるほど。バスケットボールシューズこそがスニーカーというのは、なんとなくわかるような気がします。

ケッズやコンバースのバスケットボールシューズは1950〜60年代頃から若者がタウンユースするようになったそうですが、コンバースのオールスターのような形状こそがバスケットボールシューズ=スニーカーという固定観念も広まっていたようです。

そんな中にアディダスがぶっ込んだ、最新デザインのバスケットボールシューズが……。

そう! スーパースターだったんです。業界の常識を覆すようなデザインは、当時の人々に強い衝撃を与えたそうです。そしてその機能性の高さから、様々な一流プレーヤーから絶賛されました。

特徴的なのは、貝殻のようなラバートゥですよね。

それまでの一般的なバスケットボールシューズとはまったく違うデザインで、ファンからは「シェルシューズ」とも呼ばれたそうです。そしてスーパースターといえば忘れてはならないのが、1980年代のヒップホップシーンとのつながり。60年代に発売されたスーパースターが'80sカルチャーの一環として連想されるのは、この時のブレイクが理由です。

ランDMCですか!

彼らだけではなく、80年代のヒップホップ革命の中心地であるニューヨークのクルーたちは、こぞってアディダス・スーパースターを履いていたそうです。ランDMCはアディダスに敬意を評して『マイ・アディダス』という曲までリリースしています。

ヒモを抜いて履くのが流行ったんですよね。

それ、もともとは受刑者スタイルなんです。受刑者は刑務所に入ると、逃走を防ぐために靴ヒモを抜かれたそうです。ゲットーのギャング文化であるヒップホップシーンでは、ムショ帰り風のやばい雰囲気をアピールすることもステイタスだったので、ヒモなしが流行ったんですね。

しかし、ヒモを抜いたら履きにくいですよね。

そりゃもう(笑)。悪いことは言わないから、やめたほうがいいです。ランDMCがブレイクして彼らのスタイルが伝わってきた頃、僕は高校生でしたが、ヒップホップ好きの友人がヒモなしスーパースターを真似しました。でもあまりに歩きづらかったようで、3日目にはシレッとヒモを元に戻していましたから。

よく3日も我慢しましたね(笑)。

笑。そんなスーパースターは、発売から52年も経っているのにずっと色褪せない名品中の名品です。いろんなスタイルに合わせやすいし、本当におすすめですね。

ヒモは抜かない方がいいですね。

いや、敢えて今こそヒモ抜きもかっこいいんじゃないですか? 保証はしませんけど(笑)。

Q. スタンスミスって、最初は違う名前だったって本当?

そしてもうひとつ。歴史的な名品コート系スニーカーが、テニスシューズのスタンスミスです。

スタンスミスは、まさに王道中の王道。“ザ・コート系スニーカー”という感じです。

スタンスミスも発売は半世紀以上前ですよね?

う〜ん、それが実は微妙で……。スタンスミスのファーストモデル発売年については、諸説あるんですよ。

え、そうなんですか?

はい。1965年とも1971年とも言われています。ざっと調べただけでも、1973年、1975年、1976年説などもあるようです。

へえ! どうしてそんなことに?

最初期のものは、フランスの名テニスプレーヤー、ロバート・ハイレットの協力で開発され、1965年に「ハイレット」というシグネチャーモデルとして発売されました。そのモデルは現在のスタンスミスよりもアウトソールが厚く、細部も色々と違います。

でも基本的な形状は、今のスタンスミスと同じなんですね?

そうなんです。そしてややこしいことにアディダスはその後、「ハイレット」を履いて大活躍したアメリカ人テニスプレイヤーのスタンレー・ロジャー・スミスに注目し、“ハイレット・スタン・スミス”というダブルネームモデルを発売したんです。そうした時期を経たのち、現在の「スタンスミス」へと改められました。

なるほど。

そういう移行期があるし、デザインもマイナーチェンジを繰り返して徐々に成立していったので、どこをもって“最初のスタンスミス”とするかが微妙。発売年をはっきり言い切れない理由です。

まあ、歴史が長いモデルだから、色々あったってことですね。

ざっくり言えばそういうことですね(笑)。そのへんの細かい話は、マニアに任せておきましょう。年代によってデザインにどんな変遷があったのか、詳細に分析したサイトなんかもあるので、蘊蓄好きな人は調べてみると面白いと思いますよ。

なるほど。スタンスミスといえば、通気孔で3本線を表現したレザーの白アッパー。シュータンやヒールにグリーンのポイントを入れたカラーリングが基本ですが、現在は様々なカラーバリエーションも存在します。

シンプルなスニーカーなので、そういうちょっとしたアレンジが目につきやすく、自分の好みにぴったりのものを探す楽しみがありますね。とてもスマートでクリーンなデザインなので、1960年代以降はアイビー・プレッピー系ファッションの一環としても好まれたし、最近ではノームコアファッションが流行った際にも、ひときわ注目されたスニーカーです。

ラフなストリートスタイルにも、きれいめのジャケパンスタイルにも合うと思います。こんなに間口の広いスニーカーって、他にあまりないですよね。

“履く人の好みに応じて、いかようにも染まります”という、非常によくできたスニーカーなんです。ざっくりまとめると(笑)。

 笑。スーパースターもスタンスミスも歴史が長すぎて、つっこみすぎると終わりが見えないですからね(笑)。しかしいずれも「歴史的な名品を履く」という喜びを感じられるスニーカーだと思います。

 うまい! 整いましたね(笑)。

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