更新日:2020/12/29
華やかな場所で、タキシードなどの胸元を飾るフォーマルなアクセント小物――ポケットチーフと聞くと、一般的にはそのような印象が強いのかもしれません。
しかし、イタリアをはじめ欧州のファッショニスタの間では、カジュアルな着こなしにラフな折り方で胸元に気軽に挿すスタイルが広く愛されています。
色や柄を豊富に選べる楽しさもあり、意外にも自由度の高いお洒落であるポケットチーフの魅力を、その歴史から選び方、合わせ方まで、詳しくご紹介してまいりたいと思います。
ポケットチーフの起源には諸説ありますが、中世の欧州で男性が婚約の証にハンド・カチーフ(ちなみに「カチーフ」は女性のかぶりものが由来とも言われています)、いわゆるハンカチをウエストコート(ベスト)に忍ばせていた、という説が有力です。
19世紀半ば頃、チェスターフィールドコートにポケットチーフを入れるための胸ポケットが設けられるようになり、1920年代に入るとジャケットにも採用され、現代の形になったと言われています。その後、素材や色、挿し方も多彩になり、遊び心ある大人のお洒落のひとつとして一般にも定着していきました。
18世紀のフランスで、かの有名なマリー・アントワネットがルイ16世に「国内のハンカチは正方形でなければならない」という法律を制定させたことが最初、とされていますが、その経緯や、彼女が正方形であることにこだわった理由までは定かではありません。
当時、高貴な身分の女性の間でハンカチが流行していた背景もあり、ファッションとして過剰になっていく様子を見た王妃が規制をかけたのでは? とも言われています。そしてポケットチーフが流行してからも「正方形」というフォーマットは受け継がれていきました。
ポケットチーフ=フォーマル、という印象もありますが、イタリアをはじめ欧州の男性のファッションでは、カジュアルな装いにも合わせることが多く、実は非常に自由度の高い着こなしアイテムと言えます。
タイドアップしないジャケットの着こなしでも、胸元にチーフを挿すだけでグッと華やかな印象になり、軽やかでありながら見映えも良く、装いにも幅が広がります。遊び心をもって、形式とらわれないことが、ポケットチーフを楽しむための基本の「き」なのです。
ここからは、いざというとき間違いのない挿し方を知りたいという方はもちろん、普段の着こなしにポケットチーフを取り入れてみたいと思った方にもお薦めの、折り方や選び方のコツをご紹介していきます。ぜひこのページを参考に、様々なポケットチーフのアレンジにトライしてみてください。
正方形であること以外に決まりごとは少なく、デザインのバリエーションが無数にあるポケットチーフ。いったい何を選べばよいかわからないという方も多いのではないでしょうか? ここではまず、素材とカラーについて、選ぶ際のコツを紹介していこうと思います。
古くから欧州の富裕層の間では、燕尾服やコートに白いリネンチーフを挿す慣習があり、今でもフォーマルな場面のポケットチーフにはリネンが常識となっていますが、カジュアルなシーンではシルクやコットンなどの素材が多く採用されています。
Tシャツやニットにさらり1枚ジャケットを羽織るスタイルには、上品な「光沢感」があるシルク素材がお薦めです。モダンブルーで取り扱うポケットチーフにもシルクを用いたものが多く、イタリアクラシコやハイブランドにおいても多く展開されています。
ツヤ感のある素材のため、ゴージャスな印象もあり、結婚式やパーティシーンでも違和感なく合わせることがきます。タイドアップしたスーツスタイルにも映えますので、エレガントであるのはもちろんのこと、シーンを選ばずお愉しみいただけます。
シルクほど光沢感はなく、それでいて華やかさを品良く演出できるため、ブラックタイやホワイトタイを合わせるフォーマルな場所では、リネン(麻)素材がベーシックです。基本のTVホールドで合わせるのが間違いなく、ビジネスシーンにも応用することが可能です。
ただし、汎用性は高いもののドレス感が強いアイテムなので、カジュアルな着こなしの際には少し合わせづらいのは難点です。普段使いでもお楽しみいただくなら、シルク素材のものをお選びいただくことをお薦めいたします。
淡い色のジャケットには濃い色のポケットチーフを、黒やネイビーなどダークトーンのジャケットには明るい色のポケットチーフを選ぶなど、ジャケットとは対照的なトーンの色を胸元に挿すことで、より印象が強くなり、最も簡単に取り入れることができます。
タイドアップしたジャケットスタイルのときには、ネクタイと同系色のポケットチーフを合わせると、よりスタイリッシュにまとまります。シルクで素材を合わせるとより統一感も増し、華やかなシーンではよりエレガントな佇まいを演出することが可能です。
多色使いのジャケットに用いられている「1色」から色を拾うことで、全体にさり気ない統一感を醸し出すことができる、上級者のテクニックです。写真のように、一見モノトーンに見えるジャケットにこっそり忍ばせた色をピックアップすると、よりお洒落度が増します。
イタリアのファッションなどでも多く見られる、ポケットにざっくりとレザーグローブを挿すスタイル。実は19世紀半ば、コートに胸ポケットが誕生した当時はチーフではなく手袋を挿すのが常識だったともいわれており、けして奇抜なスタイルではないのです。手袋以外にも、様々なアイテムを胸ポケットに挿すアレンジがハイレベルなお洒落として広まっていますので、ぜひ常識にとらわれず自由にお楽しみいただければと思います。
別名「スクエア」と呼ばれる、最もスタンダードな折り方の一つです。色や柄の主張を抑え、華やかさが控えめなことで、フォーマルにもカジュアルにも幅広く対応ができます。
正方形を半分に折る
両サイドを
中央に合わせるように折る
観音開きのような状態
さらに半分に折る
下部を折り上げ、
サイズを調整したら完成!
その名の通り、ふんわりした形状のアレンジで、胸元に豊かな表情を加えてくれます。ラグジュアリーな雰囲気を醸し出し、職種によってはビジネスシーンでもお使いいただけます。
手で輪を作り、チーフをかける
中心を輪の中に押し込む
輪にした手は軽く握ったままにする
もう片方の手で
軽く握るように持ちかえる
ふんわり整えたら完成!
比較的簡単な折り方で構成することができ、決まりきった完成形がないため、さり気ないお洒落を演出できます。カジュアルシーンではパフドとミックスしたアレンジも人気です。
チーフ中央を指で摘み上げる
もう一方の手で、
軽く握るように形を作る
四隅を上にして、下部を折り返す。
裏返したら完成!
胸ポケットから「2つの山」が覗く合わせ方で、セミフォーマルに相応しいスタイルとして有名です。とっておきのディナーデートなど、華やかさを演出されたいときにお薦めです。
正方形の対角線を少しずらして
半分に折る
片側を直角に折る
もう片側も同じように折る
巻きつけて下部を折り、
裏返したら完成!
ツインピークスに比べ、結婚式や披露宴など、少しカタめなフォーマルシーンにおける代表的な折り方。ツインピークスに対し、こちらは胸元から覗く、3つの山が特徴です。
正方形を半分に折る
下の角を少しずらして折り上げる
さらに角が3つ並ぶように
もう一度折る
裏返して
サイドと下部を折ったら完成!
名称のごとく、三角形の折り目を覗かせたスタイル。ビジネスにもカジュアルにも、セミフォーマルにもマルチに対応します。三角のバランスをとりながら美しく魅せるのがコツ。
正方形を半分に折る
片方を直角に折る
もう片方も同じように折る
巻きつけて細長くする
下部を折り上げ、
サイズを調整したら完成!
トライアングラーのように三角形を覗かせつつ、折り目を少しアレンジしたスタイルです。少し折り方を変えることで、柄の見え方にも変化が付き、胸元により遊びが生まれます。
正方形を半分に折る
両端が中央で合わさるように折る
さらに両端を中央で重ね、
下部を折ったら完成!
逆三角形の両端を軽く折り曲げ、ふんわりと仕上げた応用編ですが、折り方が簡単なのでビギナーの方にもお薦めです。パフドのような柔らかさを気軽に演出することができます。
正方形を半分に折る
さらにもう一回折る
片方の先端を下に向け折る
もう片方も折り、重ねる
中央が崩れないように、
両サイドを整えたら完成!
TVホールドを3つの段差で作ったように見えるスタイル。柄のあるポケットチーフで作ると、写真のようにより個性的な表情に仕上がるので、周りとの違いを出されたい方はぜひ。
正方形を半分に折り、
波のように折る
さらに折り、
横ラインが3段になるようにする
片方を直角に折る
サイズに合わせてもう片方も折る
余った部分は後ろでたたみ、
長さを調整したら完成!